リゾートについて語るときに我々の語ること

2012年10月、沖縄は竹富島に新しくオープンした星のやに宿泊した。 この星のや、我々が待ち望んでいたリゾートなのだ。 我々は、リゾートの部屋は断然ヴィラ派。国内でヴィラタイプのリゾートは多くないのが現実だが、沖縄にはいくつかヴィラタイプのリゾートが存在する。その多くは、バリのようなアジアンな雰囲気。沖縄が誇る、昔ながらの赤瓦の家、これを客室のヴィラとして提供するリゾートはないのか？ (実際にはあるのだが、リゾートというより民宿だったり、好みに合わなかったりとなかなかいい所がない。) 我々がずっと抱えていたこの思いに、やっと応えてくれたのが「星のや 竹富島」だ。縁側を備えた赤瓦の木造ヴィラ。その周りは石積の壁で囲われ、入り口にはヒンプン。そして、白砂が敷き詰められた道。伝統的な沖縄の集落を再現したリゾートなのだ。 これを竹富島に作ってしまったというのがすごい。竹富島といえば、昔ながらの街並みを保存している島として知られ、大規模なリゾートホテルを建設することなどできないのだ。だから、星のやができるまで、島内には民宿等の小規模な宿しかなかった。 当然、星のやの建設計画には住民の反対活動が巻き起こることになるのだが、苦節6年、ようやくリゾートの開業にこぎつけたのだ。このあたりの経緯には、ここでは触れないが、興味のある方はweb等で調べれば情報はたくさん見つかるだろう。 2012年6月のオープン以来、フルブッキング状態の中、なんとか予約を確保した我々。混雑を心配しながらも、竹富島へ向かったのだった。

竹富島の玄関口となるのは、八重山諸島の盟主、石垣島。八重山の各島へ渡るには、石垣島から船を利用する事になる。那覇経由で石垣空港に降り立った我々は、すぐに石垣港へ向かった。 タクシーで10分ほど、降ろされたのは連絡船のターミナル。以前小浜島を訪れた時、こんな立派なターミナルはなかった。 チケットを買って桟橋へ。 入ってきた船から乗客が降りると、すぐに乗船が始まる。桟橋には20分も停泊していなかっただろうか。随分効率のいい運行だ。 船の名前は「ちゅらさん」 出航。ほとんど揺れもなく、静かな船旅。ほんの10分程で竹富島へ到着した。

竹富港へ降り立った我々。 ミルキーブルーの海が美しい。 ちょうど送迎バスが来ていた。このバスは予約制ではないが、30分毎の運行。港に着いた時、必ず来ているわけではないので注意が必要だ。 港を出発したバスは、集落方面へ向かう道から外れ、未舗装の道をゆっくりと進む。とてもこの先にリゾートがあるとは思えない。 港から10分ほどで、星のやの入り口に着く。 目立たないが、こんな看板が設置してある。 道はぐるっと迂回する形でエントランスへと続く。 上記画像左側の石垣。写真を見て初めて気づいたが、これは「スンマシャー」を模しているようだ。「スンマシャー」とは、竹富島の集落にも設置してある魔よけのこと。石垣の真ん中に巨木を植えたもので、集落に病気等の災いが入ってこないように、道を遮るような位置に設置される。 巨木というには、まだまだ小さい木だが、これからどんどん立派に成長していくのだろう。 赤瓦のレセプション棟が見えてきた。いよいよリゾートでの滞在が始まる。

ついにリゾートのエントランスに到着。 正面から。入った先にも壁があるように見えるが、これは壁でなくヒンプン(竹富島では、マイヤシと言う)。家の中に魔物が入ってこないように、妨げるためのもの。沖縄で信じられている魔物は、曲がるのが苦手なため、ヒンプンさえあれば家の中には入ってこれないというわけ。 さぁ、入ってみよう。 ヒンプンは左側から抜けるのが決まり。 ヒンプンの向こうには、レセプションがある。ここでチェックインの手続きを行う。名前や住所を書かされる事もなく、非常にスムーズなチェックインだった。 レセプションから振り向いて見たエントランス。 みんさー織の意匠がそこかしこに。 すぐに立ち去ってしまうのがもったいなく思えるほど心地よい空間だった。

チェックインを済ませた我々は、さっそく客室へと向かう。 部屋へは、スタッフが運転してくれるバギーで移動する。 赤瓦の客室が並ぶ道を行く。真っ白な砂が敷き詰められた道は、本物の集落のよう。ただ、石垣と建物が新しい分、本物とは様子が違う。 抜けるような青い空が気持ちいい。 石垣には、所どころ案内板が置いてある。 上の方に書いてある象形文字のようなものは、客室のエリアを示している。リゾート内は、中央にあるプールを取り囲むように客室が配置されており、3つのエリアに分かれているのだ。 これはプールへと続く道。 我々の客室の近く。このあたりは広い道が多い。 これが我々の客室。全客室にもヒンプンのある門が設置されている。

スタッフの案内で部屋へと入る。ここもヒンプンは左側から。 スタッフはヒンプンについて色々と説明してくれる。左側は人間が、右側は神様が通る所だということは、なんとなく知っていたが、家の住人が呼んだ客は右側を通っても良いというのは初めて聞いた。 そうすると、宿泊客である我々は右側を通るのか？という事になるが、我々は滞在中、この家の主人という事になるから、やはり左側を通る、という事だ。 庭はなかなか広い。この庭で遊ぼうと、子供用のビニールプールを持ってきたが、ここにはいつも蜂がいて、遊ぶ事はできなかった。ちょうど我々の滞在中、蜂が大量発生していたのだ。 庭の片隅にはダイニングスペースも用意されている。 植えられた木や花は、いかにも「植えました」という感じ。これからだんだん馴染んでくるのだろう。 しばらく我々の家となるヴィラ。 星のや竹富島には、客室が4種類あり、我々は「ズーキ」を選んだ。どの部屋タイプも大きな違いはないが、ズーキはベッドルームが広く作られており、家族連れには最適だ。 屋根にはちゃんとシーサーが乗っている。このシーサーは、部屋によって異なるようだ。 沖縄の伝統的な家には玄関がなく、正面の縁側から出入りするのが正しいのだそう。 と、言っても、外側から鍵をかけられるのは、この左側の出入り口だけ。結局ここから出入りすることになるのだった。

ズーキの室内をご紹介する。 室内に入ると、木のいい香りが漂っている。 星のや竹富島の客室は、全タイプ縁側部分がリビングになっている。 奥はベッドルームになっている。照明はみんさー織の意匠。 庭を見渡す事ができるこのデイベッドが心地いい。 ただ、デイベッドの下の床にはホコリが積もっていた…。何ヶ月も掃除していないような感じだ。 戸棚の上にもみんさー織の照明が。iPodドッグのついたCDプレイヤーも設置してある。(iPodとDVDプレイヤーは私物です。) 全ての客室は南向き。これも集落と同じなのだ。

デイベッド裏の扉からベッドルームへ入れる。この扉は障子でなくプラスチック。子供連れとしては安心だが、雰囲気的にはマイナスかな。 ベッドルームの床は琉球畳。 3人分のマットレスを並べても余裕がある広いベッドスペース。 細々としたものが入っている収納スペース。なぜか冷蔵庫もここに。リビングに設置してくれた方が使いやすいと思う。 上部の棚には、またもホコリがうっすらと積もっている…。 電話機はバング&オルフセン。個人的には、ベッドルームに電話を置かれるのは好きではない。誰かが寝ていると使用しにくくなるからだ。特に子供連れだと、夜以外にも昼寝で使ったりするのだ。 この扉の奥は、クローゼットとトイレ。詳しくは、次回紹介する。

ズーキのご紹介も4回目。今回は最終回、これまで紹介しきれなかった部分をまとめて紹介する。 ベッドルームの扉から奥に入った部屋。ちょっと広めのクローゼットになっている。黒いバッグには、プール用のタオルが入っており、そのまま持っていけるようになっている。 部屋のホコリが気になっていたので、上部の棚も覗いたみたところ、案の定ホコリが積もっていた…。こんな高い位置にある棚は使わないから、別にいいんだけど…。 さらにその奥にはトイレがある。ベッドルームを経由しないと入れないこの位置は、正直使いにくい。 トイレの電灯は、センサーがついていて、中に入ると自動的に明るくなる。しかし、このセンサーは便器の真上ではないので、用を足している間は感知してくれない。点灯している時間も短いので、途中で消えてしまうことが多く、その度に手をブンブン振って点灯しなければいけなかった。 続いてバスルーム。バスルームは下の写真で手前の扉。ベッドルームとは反対側に位置する。 フローリングの部屋の真ん中に、バスタブがポツンと置いてある。モルディブの「ココ・ボドゥヒティ」を思わせる大胆なデザインだ。 奥にはシャワールーム。

星のや竹富島には、レストランは1つだけ。レセプションのすぐ近くにある「集いの館」内にある。 集いの館も、ご覧の通り赤瓦の建物だ。 中はこんな感じ。 奥の方にはソファ席も。 客室数に対しては、少し席が少ないようにも思える。そのためなのか、宿の予約後に夕食の予約をするよう案内された。我々は、リゾート滞在中に時間を決めて何かをするのが大嫌いなので、これには閉口。 アウトサイドにも席は用意されているが、陽射しの強い日中はとても利用する気にならない。 インサイドの席からは、緑豊かな外の様子がよく見える。 アウトサイド席からはこの眺め。プールサイドが一望できる。