北海道、美瑛の「スプウン谷のザワザワ村」。
今回は、コテージ内の絶景スペースであるサンルームと、屋外スペースをご紹介する。
前回、窓の外の風景としてご紹介したこの窓。
この窓の外には、ちょっとしたスペースが用意されていた。
バスルームともつながっているここは、ちょっとしたくつろぎスペースにも見えるが、特に椅子等は用意されていない。
しかもここには、蜂が飛んでいる事が多く、窓を開けるのも怖いくらいだった。
一面に畑が広がる眺めは素晴らしいのだが…
蜂の他にも、虫はそれなりの数出てくるので、苦手な人は必ず網戸を使用してほしい。
そして、こちらがリビングダイニングにつながるサンルーム。
この一角は、天井までガラス張りになっている開放的なスペース。
ハンモックは寝転がるのではなく、座るのにちょうどいいように調節されている。
景色を眺めながらゆっくりくつろぐには最適だ。
サンルームの向こうは、畑と隣のコテージ。
このサンルームを通して、コテージの中は丸見えになってしまうから、気になる人はクローゼットにカーテンが用意さているから利用できる。
コテージの外には、こんなガゼボのようなスペースが用意されている。
屋根はないが、こんな晴れた日には最高に気持ちいい場所となる。
朝食はここで頂いた。
大きなフレンチトーストに、サラダとスープ。野菜の濃い味が印象に残る朝食だった。
なお、夕食はオプションでつける事ができる。
レストランはないので、もちろんコテージの中で。
スタッフが1品ずつ持ってきてくれる。こちらも、素材の味が活きる素朴ながら丁寧に作られた料理ばかりだった。
そこで選んだのが、美瑛の「スプウン谷のザワザワ村」。
メインの牧場は帯広から少し北の鹿追町という所にあるので、美瑛だと全くついでという感じではない。実際、使用する空港も帯広から旭川に変更したくらいなのだが、それだけこの美しい宿が気になってしまったのだ。
まるで童話のタイトルのような名前だが、実際に宿の写真を見ると、なるほどと思わせるピッタリな名前なのだ。
「おかのまち」と称するほど丘が多い美瑛の町。
いくつもの丘に囲まれた谷の底に、隠れるようにひっそりと存在するザワザワ村。まるでスプーンひとさじ分だけ、丘をすくい取ったように見える事から、「スプウン谷」と呼ばれているようだ。
宿の周りには、見渡す限りの青い畑。丘から風が吹き降りて来ると、ザワザワと音を立てる。
手しごと、土のにおい、開拓、スローライフ…。
そんなキーワードがじわじわと染みてくる滞在。田舎での暮らしそのものといった、宿泊ではなくまさに体験。宿のオーナーの言葉を借りれば、「本物のドキュメント」。
客室はわずか5室。全てがコテージ、というより一軒家という言葉が似あう。
オーナー自らがこだわって仕上げたという壁は、焦しバターのような風合い。
まるでおとぎ話に出てくる、農家が集まった小さな村のようだ。
その、ゆったりとした暮らしの中に、少しだけお邪魔してきた。
ナビが使えない場合は、「北西の丘展望公園」を目指そう。ここを目印にするのがわかりやすい。
実はここから少しだけ見えている。方角は、まっすぐ西。
まずは道なりに南西へ向かってから、北上すれば良い。
ここがザワザワ村の入口。
ホテルのゲスト以外は立ち入り禁止という事になっている。
と、言っても、どう見ても農場の入口なのだが…
ともあれ、中に入ってみる。
と、長い下り坂の下に…
見えてきた焦しバター色の建物。
ビニールハウスもある本格的な畑に囲まれている。
丘と畑に囲まれた、まさにかくれ村。
周りから全く見えないこの村が、下り坂の向こうに見えてくる感動的なその風景。
驚きもあり、宿の哲学も感じさせる完璧なアプローチだ。
こちら側は収穫済なのだろうか。
畑であったような形跡がうかがえる。
対してこちら側は一面の緑。
どこまでも続いているような広大な畑だ。
レセプションや、いくつかの客室。ザワザワ村の全貌が見えてくる。
看板もある、ここが村の入口。
周りの風景も相まって、まるで中世ヨーロッパの小さな村のように見える。
「Slow Down!」
ここからは時間の流れが違う。
大きくカーブした道沿いに、レセプションと向かい合って建つのが客室となるコテージたち。
相当にこだわって、何度も重ね塗りしたという壁の色。
「BUTTER WALLS」と呼ばれる焦がしバター色の壁は、ここだけの大きな特徴だ。
レセプションのある母屋も、同じ壁の色。
オーナー家族やスタッフは、この母屋に住んでいるようだ。
ここが自宅なんて、信じられない。
まずはここへ到着を知らせに行く事としよう。
よく見ると、赤い扉の横に「Reception」の表示。
扉を開けて中に入ってみよう。
入った正面にレセプションカウンターが。
ここで宿泊カードに記入し、客室の鍵を受け取る。
屋根の上に突き出た煙突につながっているであろう暖炉に、積まれた薪。
田舎の古き良きくらしを標榜するこの宿らしいカントリーな雰囲気。
何もなかったこの小さい谷を、イチから開拓していったというこの宿。
そこここに、開拓中の写真が飾ってある。
宿の哲学を反映しているようなレセプション。
物が多いのにごちゃごちゃした印象に見えないのは驚異的。
入り口側の壁には、今夜の夕食のメニューが記載されている。
前菜はこの中から2品選ぶように指示される。
なお、夕食はオプションで1人3800円。客室で頂く、宿泊者専用のビストロだ。
暖炉の裏には、後から増築したというコンサバトリー。
レセプションよりさらに物が多い空間だが、緑が多く気持ちのいい場所だ。
ここにある本や雑貨等は、自由に使用して良いらしい。
アサインされたのは、入り口に一番近い5番のコテージ。
乗ってきた車はコテージのそばに停める。荷物は自分で中へ運び入れる。
2階建てのコテージ。その裏にはもちろん、一面の畑が広がっている。
中に入ったところ。
玄関先には、殺虫剤等の虫対策グッズが用意されている。
1階はリビングダイニング。
奥の方はウェットエリアになっているようだ。
ソファ等のファブリックは、単品で見るとちょっと…という気がするが、この空間には違和感なく合っている。
小さめだが、ここにクローゼットのようなスペースがあった。
バスケットが乗ったワゴンは手作りのようだ。
手仕事の風合いは、様々な所に感じられる。
テレビはあるが、Wifi等のインターネット環境は一切用意されていない。
必要な人は自分で用意しよう。
シンプルながら、色んな工夫が凝らされたこのリビングダイニング。
周囲を緑の畑に囲まれている事もあり、なかなか気持ちのいい空間だ。
窓を開けると、もちろんこの光景。
ただ、網戸を閉めないと、すぐに虫が飛び込んでくるのでご注意を。
階段は壁に沿って設置されており、なるべくリビングルームが狭くならないようにしようという工夫が感じられる。
階段を上り切ったところ。
写真手前と、奥にそれぞれベットが設置されており、家族4人でも十分にスペースを使う事ができる。
まずは、マスターベッドルームともいうべき、こちらのベッド。
手作りだろうか?低めの台にマットレスが2つ乗せてあるシンプルなもの。
窓はたくさんあるが、1階と違って、しっかりと遮光性のあるカーテンが用意されているので、外の明かりが気になる事はない。そもそも外の明かりというもの自体はほとんどないのだが。
窓からの眺め。
小さなスプウン谷なので、これでほぼ全体を見まわしている事になる。
三角屋根の形が確認できる屋根。
壁際まで行くと頭をぶつけてしまうほどの高さが、屋根裏部屋のようで、ちょっとワクワクする。
さて、次はこちら側のセカンドベッドルームを見てみよう。
この狭いスペースにベッドが2つ、縦に並べてある。
子供用の寝室を想定しているのだろう。
この狭さが、秘密のスペースのようで、子供心をくすぐられる。
壁の棚には絵本も置いてあった。
ここの窓からは、入り口側の農場が見渡せる。
コーヒーや紅茶、湯沸かし機が用意されている。
コーヒーは自家焙煎の豆が用意されている。
棚の上の方に用意されているミルを使って、自分で挽くようになっているのだ。
コーヒーを自分で淹れた事のない人でも、手順が詳しく記載された紙が用意されているから、是非チャレンジしてみよう。
大きな冷蔵庫もあるが、中身はからっぽ。
バスルームへは、こちらの扉から出入りできる。
扉の中へ入ったところ。
左側の扉は物入れで、ゲストが使うスペースではないようだ。
正面の梯子状のものはタオルかけ。
右から洗面所、トイレ、風呂場。
洗面所はかなり狭い感じ。
特に女性が化粧等に使う事は難しそうだ。
トイレがここまでオープンな仕様なのは、日本では珍しいかもしれない。
ウォシュレットなのは当然ともいえる。
バスタブは洋風のこのタイプ。
下のタイルが少し汚れて見えるが、これは素材と少し濡れているせいで、非常に清潔に清掃されている。
バスルームも、もちろんこの畑ビュー。
もちろん、畑からは丸見えになってしまうから、気になる人はカーテンを閉めよう。
バスタブ横の扉からは、例の外のスペースへ出る事ができる。
特に用途のあるスペースではないので、あまり意味はないかもしれない。
自宅の奥にはなんと牧場がある。
ここに住んでいるのが、ポニーの流星号。
長男君は動物大好き。流星号の事もすごく気に入ったようで、一時間に一回くらいは「流星くん見に行こう」と言い、何度もここに通っていた。
次男君はちょっとビビり。
触る事はできずに眺めるだけ。
奥にはちゃんと流星君の家もある。
顔を出して餌をねだる流星君。
子供たちにとっては、一番のお気に入りスペースとなったのだった。
ここからも、どこまでも続く丘が見える。
こんな所に暮らしてみたい、とため息が出てくるような風景だ。
メルヘンチックな世界観が「カワイイ」と紹介される事の多いこのリゾートだが、滞在してみて特に印象に残ったのは、その素晴らしい環境だった。
農場にしか見えないエントランスからして度肝を抜かれる通り、ここは周囲を畑の緑に囲まれている。
ちょうど客室のある場所は、すり鉢状の谷底といった地形なので、青々とした畑が常に目に飛び込んできて、まさに「囲まれている」という感覚になるのだ。
さらに、谷へ吹き降りてくる風が畑を揺らし、ザワザワと音を立てるのが本当に清々しい。涼しい気候と相まって、外でくつろいでいるのが気持ちいい。
もちろん、客室のコテージも素晴らしい雰囲気。
畑ビューのバスルームや自家焙煎のコーヒー、屋根裏部屋のようなベッドルーム。
どれも、遊び心のある仕掛けで、滞在しているだけでワクワクしてしまう。
ヨーロッパの田舎に遊びに来たような、独特の雰囲気も心地よいと感じた。
唯一、客室間をつなぐ電線だけは何とかして欲しいと思った点だ。
このリゾートの独特な雰囲気を作り、維持しているのは、オーナー家族の強いこだわりと言える。
壁の色や、建材の質感に偏執的なまでにこだわり、さらに田舎暮らしや手仕事に、強いこだわりを持っている事は、公式ホームページを見てもわかる。
あまりに色々と書いてあるので、うるさいリゾートなのではないかと警戒してしまったほどだ。
実際は、そのこだわりをゲストに押し付けるつもりはないようで、何かを強制されるような事はなく安心した。
人をあっと言わせるような物を作り上げるには、ある意味狂気とも取れるような強い思いが必要なのだと、感心すら覚える滞在となったのだった。
